当協会のご紹介

髙谷光信理事長 ご挨拶

音楽を通し《日本とウクライナ》の国際交流を生涯活動とし努力を惜しまず

            

2023年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻から一年が経ちます。
侵攻当初、私の心は怒りと悲しみで一杯でした。しかし数ヶ月で停戦できるのではないかという淡い希望も持っていました。この様な暴挙を世界が許すはずがないと思っていたからです。しかし侵攻は一年経った今も終わっていません。

私達、一般社団法人 日本ウクライナ音楽協会はこの1年間、“停戦後のウクライナ音楽界復興のための支援活動”としてチャリティーコンサートや講演などを行って参りました。
その中で「民間の人間が前線で戦い、街にはミサイルが落ち、毎日何人もの人が被害を受け、亡くなっている現状に『音楽』は必要なんだろうか。」ずっと、この自問自答を心の中で繰り返してきました。
ニュースなどの日本のメディアに取材をしていただいた際には「ウクライナの人達が欲しいのは音楽ではなく武器だ」「こんな時に音楽なんて!必要なのは音楽ではなく銃や戦車だ!」という厳しいご意見を視聴者の皆様から頂いたこともあります。
しかし、私達がこの活動を続けるのは、ウクライナで20年以上育んできた素晴らしい音楽による絆があるからです。
ウクライナの音楽家達が、自由の希求のためにスラヴ音楽を奏でていたこと、街には音楽が溢れ、ウクライナの人達にとって音楽は生活の一部であること、それを私達はこの目で見て知っているからです。

私が常任指揮者を務めるチェルニーヒウフィルハーモニー交響楽団は、2022年11月に侵攻以来9ヶ月ぶりの演奏会を行いました。
多くの団員は兵士として軍に所属したり隣国に避難しているため、20人程の小規模な室内楽オーケストラのプログラムでした。私を含め、3名いるはずの指揮者は不在のため、コンサートマスターが代わりに指揮を務めました。街にはライフラインも整っておらず、空襲警報も鳴る中、彼らは勇気を持って演奏会を行なったのです。
演奏会後、楽団のFacebookには多くのお客様のコメントが寄せられていました。「素晴らしい演奏会だった!ありがとう!」「このような困難な時に、喜びを与えてくれることに心から感謝します」「演奏会を行うという告知を見て涙が出た」「今この時に聴く音楽は、まるで新鮮な空気を吸うようだ」
これを読んだ時『音楽家だけでなく、街の人たち、ひいてはウクライナにとって、音楽は絶対に必要なものだ』私は、そう確信しました。

浦理事が在学しているウクライナ国立コトリャレフスキー記念ハルキウ芸術大学は、近くに落ちた爆撃の爆風を受け、校舎は甚大な被害を受けました。しかし、空襲警報の鳴る中でオンライン授業を行なっています。学生達は音楽の学びを止めることはなく、防空壕や瓦礫の中で楽器の練習を続けています。
こちらのハルキウ芸術大学には、日本ウクライナ音楽協会が日本の皆様からお預かりした支援金のうち、約100万円を送金させていただきました。

私達が支援活動をする中、先述のような否定的なご意見もいただきましたが、それを超える多くの方からのご支援ご協力、そして応援の声を頂戴いたしました。ウクライナの現状は辛く悲しいものとなっておりますが、日本の皆様のくださる真心にはいつも心が温かくなるばかりです。
日本の皆様の音楽を愛する心を“支援”という形で受け取り、それをウクライナの音楽界に届けること。それは、私達が協会設立の際に掲げた理念でもある《両国の音楽文化の架け橋となる》ことに繋がっていくと信じています。

この1年間、多くの方のご支援ご協力を頂いたことに、この場を借りて心より御礼申し上げます。
本当に本当にありがとうございました。

しかし、侵攻はまだ収束の気配もありません。チェルニーヒウフィルの仲間は今も軍隊にいます。
私達の支援活動は「停戦後、街に戻った音楽家達が少しでも早く音楽を再開できる環境を整えること」です。
ウクライナに平和が訪れ、再び皆で音楽を奏でるその日まで、これまで以上に邁進していく所存です。

音楽を通し、日本とウクライナの国際交流を生涯活動とし努力を惜しまない覚悟です。
今後とも、何卒皆様のご理解と暖かいご支援ご協力を賜りますよう、心からお願い申し上げます。

2023年2月24日
一般社団法人 日本ウクライナ音楽協会 理事長 髙谷光信

日本ウクライナ音楽協会 あゆみ

2021年4月1日『日本ウクライナ国際交流協会』として発足。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により活動自粛を余儀なくされる。
2022年2月1日 音楽活動を支援するという指針を確かなものとし、団体名を『日本ウクライナ音楽協会』(Japan Ukraine Music Association 呼称:JUMA)へと改名。
<リサイタルシリーズ><オーケストラシリーズ><ジャパンフェスティバル>という3つの柱を掲げ「日本・ウクライナそれぞれの国にいる音楽家や芸術家の文化的活動における支援」を活動理念とし活動を開始する。
2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻を受け、協会が掲げる3つの柱とは別に緊急的にウクライナ支援活動も開始。「停戦後のウクライナ音楽界復興支援」を目的とし、支援金・寄付金を募り、支援コンサート、講演を日本で精力的に行っている。
現在、届けるべきウクライナ音楽関係各所に国際送金が確実にできるという保証がない為、支援コンサートや講演、また希望者・希望団体からの支援金・寄付金を日本ウクライナ音楽協会で一度預かり、国際送金が確実になった際に送金する、という方法をとっている。その為に2022年5月16日『一般社団法人 日本ウクライナ音楽協会』として体制を整えた。
ウクライナの現状を伝えるだけではなく、ウクライナの音楽文化の豊かさを、ひいてはウクライナの素晴らしさを伝えることを協会としての本来の発足意義とし、「何を求められ、何をするべきか、何ができるのか」をモットーに、支援および音楽を通した日本とウクライナの国際交流のため活動している。